建設業許可承継制度とM&Aの関係性とは? 建設業許可承継制度のメリットとデメリットを徹底解説!
建設業許可承継制度とM&Aについて
はじめに
近年、建設業界においてM&A(企業の合併・買収)が活発化しています。業界の環境変化や競争激化などが背景にありますが、その一方で、建設業には許認可制度があり、M&Aにおいても一定の手続きが必要です。本記事では、建設業許可承継制度とM&Aの関係について解説します。
建設業許可承継制度とは
建設業許可承継制度とは、建設業者が事業譲渡などにより事業を承継する場合に、新たに許可を取得することなく、既に取得している許可を引き継ぐことができる制度(2020年10月より新設)です。具体的には、すでに許可を受けた建設業者が後継者不在のため他の建設業者へ事業譲渡する場合や、合併により新たな会社が設立される場合に、承継元が既に持っている許可を引き継ぐことができます。
このように、建設業許可承継制度は、M&Aにおける事業承継をスムーズに行うための制度として、非常に重要な役割を果たしています。
(参考:国土交通省HP https://www.mlit.go.jp/common/001365753.pdf)
建設業許可承継制度のメリットとデメリット
建設業許可承継制度を活⽤することで、以下のようなメリット・デメリットがあります。
【メリット】
・空白期間が無くなる:事業承継で建設業許可を新規に取得する場合生じる可能性がある無許可期間(空白期間)が、承継制度を活用することで、切れ目なく許可を承継できるため、元請けや下請けに迷惑をかけることがなくなります。
・経済的なメリット:新規に建設業許可を申請する場合は行政側に手数料90,000円(知事許可の場合)を納付する必要がありますが、承継制度を活用すると手数料は不要となります。また、建設業許可の更新までの期間は5年間ですが、承継制度を活用した場合は、承継元の残存期間にかかわらず、次回の更新までの期間は承継時から5年間となります。
【デメリット】
・監督処分が承継される:承継元が過去に監督処分を受けている場合、承継制度を利用して事業譲渡をすると、その監督処分も承継先に引き継がれます。
・「営業年数」は承継されない:公共工事を請け負う際の経営事項審査の項目も、承継制度を活用して事業譲渡を行う場合、承継元から承継先に引き継がれます。しかし、その項目の一つである「営業年数」については例外的に引継ぎされません。
まとめ
建設業許可承継制度は、建設業界において、M&Aなどによる事業承継をスムーズに行うための制度です。弊社でも最近、建設業のM&A案件があり、行政庁に問い合わせましたが、まだまだM&Aでの利用事例は少ないと聞きました。実際に制度を利用するに当たっては細かな要件があり、場合によっては要件に合致せず利用できない場合もありますので注意が必要です。メリットを享受するためにも、M&Aにおける建設業許可承継制度の活用については、事前に十分に検討することが必要です。